タブの最高級品には、コードバンと呼ばれる馬皮が使われています。コードバンは、馬のお尻部分の皮ですが、表面を残してなめされた革と違い、皮膚組織の内部にあるわずか2mm程度のコードバン層の部分だけを削り出したものがコードバンの革となります。牛革は、一般的に食用牛の副産物として生産されるため流通量も多くなりますが、馬肉を食用とする地域は牛に比べ少ないため、革の生産量も少なくなります。さらに、全ての馬がコードバン層を持っている訳ではなく、馬が野生動物として生活する中で、ライオンやトラなどの肉食動物に嚙まれたり引っ掻かれたりしても、身体を守るためにできたともいわれるコードバン層は、噛まれる心配のないサラブレッドには進化の過程でなくなり、一部の農耕馬にコードバン層が残るのみとなっています。
このように貴重品であるため、近年ではコードバンを使用した既製品のタブでは1万円を超えるような製品も珍しくはありません。しかしながら、タブ革は日々酷使される消耗品であり、タブ革の更新はアーチャーにとって頭の痛い問題です。もちろん、牛皮で満足しているのであれば関係のない話ですが、コードバンのメリットを身にしみて感じているアーチャーにとっては、純正コードバンの更新に要する高額な費用負担は大きな問題です。
世界的なコードバンの利用状況を考えてみた場合、アーチェリー用タブでの需要はほんの僅かな部分であり、そのほとんどは財布やバッグなど、高価ながら意外に日常的な製品に多用されていることがわかります。それらの製品は比較的大きな面積の革を加工する必要があることに対し、アーチェリー用タブは手のひら半分程度の面積で済むものですし、まさにそれらの残渣の有効活用に最適なものとなります。
ここまで明るい展望を述べたあとで、入手の困難さを言うのは手のひらを返すようですが、いわゆる「ハギレ」を入手できるのは、バッグや財布などの生産を終えた年間の一時期だけになるということです。これは個人的な推定になりますが、年末から年始にかけての時期がベストチャンスで、それ以外の時期ではほぼ欠品となります。そうしたところから考えると、入手できるときには逃さず購入することをおすすめします。
Amazonで注文したコードバンのハギレセット6枚のなかで、最も小さいサイズの2枚でも、このように余裕でタブサイズの確保はできます。
比較しているのは、AAE CAVALIER ELITE Tabの純正コードバンMサイズです。
大きめのハギレは、このように余裕のある大きさで、かなりのタブ皮面積を確保できることがわかります。
純正のコードバン替え革を購入する際にも、天然物である替え革の厚さも気になるところですが、むしろメーカー純正の替え革よりも厚く、安心できるものでした。
いずれにしても、前述のとおり年間をとおして入手できるものではないので、タブ革を自作してみようとする方は、購入できるときに早めに入手することをおすすめします。
コメントをお書きください