大昔の知識を引きずるのはやめにしませんか。

 最近、インターネットでアーチェリー関連の情報を検索していると、気になる発言が引っかかってきます。 それは、ストリングのストランド数(ストリングを構成する原糸の本数)についてです。

 かつて、ストリングを自作する材料が「ダクロン」しかなかった時代には、自作の楽しみはいろいろなストリングカラーを自慢することでした。その時代では、たしかに弱い弓には少ないストランドのストリングを、強い弓には多いストランドのストリングを使用するという原則は厳然として存在していましたし、少ないストランドのストリングは矢速は向上してもグルーピングに劣る、多いストランドのストリングはグルーピングが向上しても矢速が劣るためサイトが下がる、という原則も一般的に認識されていたと記憶しています。当時は、使用する矢も重いアルミでしたから、サイトが下がることは大きな問題でした。そこで、強引に少ないストランドのストリングを長距離用として使用していたアーチャーも実際にいました。弓の強さに見合わないダクロン製の細いストリングを使用した場合に結果がどうなるのか想像できますか。そうです、破断です、切れてしまうんです。

 時代は変わり、ファストフライトに代表されるHMPE(高密度ポリエチレン繊維)がアーチェリー用ストリングに採用されて以降、出来の悪いストリングは別として、使用中の破断事例はほとんど聞かなくなっているはずです。原料繊維の性能が飛躍的に向上したことにより、ストランド数の目安は、使用するサービングの太さとあわせた適切なノックフィット(ノックと嚙み合う固さ)にすることです。原糸メーカーは、各種ストリング原糸について大まかなストランド数を示してはいますが、対象が大柄な欧米人であることを忘れないでください。これらの方々は、アローシャフトの長さもさることながら使用するリムもミディアム以上であり、ほとんどの日本人が使用する短いアローシャフト、ショートリムのことなんか考えていないんです。ですから、原糸メーカーが示すストランド数の基準についても、個人的にはマイナス2本が適切だと考えています。ストリングのストランド数は、ノックサイズに合わせれば良いのです。

 「気になる」こととは、いまだに弓の強さに合わせてストランド数を増減すると信じている指導者がかなり存在するのではないかということです。近年のストリング原糸の原料となるHMPEは現在でも改良が続き、ますます強靭になっています。不可逆な伸びであるクリープを限りなくゼロに近づけて安定させ、弾性率を向上することが改良の方向のようですが、いずれにせよ不要に太いストリングの使用は、改良したストリングの性能を限りなく無駄にすることであることを忘れないでください。