ストリングの素材
アーチェリーのストリング用原糸の供給は、いくつかマイナーブランドのメーカーはあるものの、BCY社とBrownell社の2社で主要なシェアを占めています。以前のアーチェリー用ストリングで使われていた素材は、当時としては強度に優れた化学繊維のダクロンポリエステルでしたが、1970年台の後半、防弾ベストや自動車用タイヤの構成材として使われていたケブラー繊維がアーチェリー用ストリングに導入され、まったく伸びない特性でエネルギーの減衰が抑えられるため、長距離では飛躍的にサイトが上がり、画期的な性能向上を実現しました。当時のアローシャフトはジュラルミン系アルミ製で重量もあり、長距離を射つ際にはサイト位置も大きく下がるため、弓の強さの選択基準は90mに届く強さのポンド数を選ぶ必要がありました。ケブラーストリングの出現により、長距離でもサイト位置に余裕が生まれ、革命的な進歩であったことを記憶しています。ところが、ケブラーストリングには致命的な欠点があり、300~500射程度でほぼ確実に破断し、それはちょうど針金の同じ場所を繰り返し曲げ伸ばしすると、金属疲労で折れてしまうのと似た現象でした。切れる場所はノッキングポイントのど真ん中が多く、時にはエンドループが切れることもありました。 近年、アーチェリー用ストリング原糸の主流となっている高密度ポリエチレン繊維のスペクトラやダイニーマは1980年台中頃に登場したようですが、ちょうどこの時期はアーチェリー競技から離れていたため、当時の詳細な状況は知りません。これらは高弾性率ポリエチレン (HMPE)、あるいは超高弾性率ポリエチレン (UHMPE)と呼ばれ、非常に軽量で伸びも小さく、ストリング原糸として非常に優れていることは周知のとおりです。ストリングの伸びについては、弾力性に相当するわずかな伸びはストレッチと呼ばれ、矢を加速させるメリットがありますが、クリープと呼ばれる不可逆性の伸びはチューニングの変化につながるため問題にされます。そのため、BCY社やBrownell社では、かつてケブラーと呼ばれていた繊維と似た構造で伸びないベクトラン繊維をHMPE繊維とミックスした「S-4」や「450plus」などの銘柄を登場させています。現在でもHMPE繊維の改良は続けられ、最新のUHMPE繊維では欠点であるクリープもほとんど無視できるレベルになっています。現在、入手できるアーチェリーストリング原糸は、様々な加工の工夫が施され、多種の原糸ブランドがありますが、素材としては大雑把に分類すると旧世代弓具向けのダクロンと競技向けとして使用されるHMPE、HMPEとベクトランのミックスの3種類になります。
ストリングの調整
すべてのアーチャーが使用しているにもかかわらず、ほとんどのアーチャーが気にしていないストリング調整のノウハウについてまとめてみました。アーチャーのほとんどがストリングをツイストして使用していると思いますが、これはブレースハイトを合わせるためだけのものと考えている人も多いようです。ツイストの大きな目的は、原糸を密着させ原糸同士の摩擦を抑えることと、ストリング断面を円形に近づけ空気抵抗を減らすこと、ストリングを構成している個々の原糸のテンションを均一にさせることにあります。そのツイスト数についても無制限ではありません。厳密に指定されているわけでもありませんが、BCY社では1インチあたり0.5~0.75回転、Brownell社では0.33~0.5回転、リカーブボウの製造元であるHoyt社のマニュアルでは5~30回転(2002年版)、10~50回転(2003・2004年版)、10回転以上(2005年版~現在)のツイストで使用するよう記載されています。また、EASTON社テクニカルアドバイザーのジョージ・テクミチョフは、68インチ用のストリングで20~60回転程度と指導していますが、ツイストが多すぎると原糸の性能以上に弾性が出ることにより矢速が落ち、さらにストリングが伸びやすくなること、反対にツイストが少なすぎると矢速は多少プラスされてもノイズが大きくなると言っています。また、使い始めのストリングはツイストせずに使用し、ストリングを構成する原糸ストランドのテンションを揃えるよう、初期の慣らしを推奨しています。したがって、これらのさまざまな考え方を総括すると、ストリングの原糸ストランドを安定させるため初期にはツイストせずに使用し、その後10回転から最大60回転程度までの範囲でツイストし、標準的なブレースハイトに調整して使用する。推奨範囲を超えてツイストしても期待するブレースハイトにならない場合、クリープにより原糸特性が変化したとみなし、交換時期と判断するということになります。 近年の超高弾性率ポリエチレン (UHMPE)は、非常に強靭なゆえ使用による劣化で破断することはありません。しかし、クリープで伸びきった状態ではメーカーが意図したストリング性能を発揮できないことになり、こうした事実を理解して使用限度を判断し、新しいストリングに交換するのが正しい使い方です。
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